高金利局面におけるオルタナティブ投資 

米国経済はこれまでのところ、大半のエコノミストが予想していたよりも金利上昇に強いことが証明されています。雇用統計は予想以上に良好で、景気後退の可能性は薄れつつあります。インフレ率も、大方の予想よりは高い水準にあるものの、まずまずのペースで低下しており、政策当局が目標とする2%をわずかに上回る水準にあります。  

これは経済の観点からは良いニュースといえますが、同時に、FRBが2024年前半に利下げする差し迫った必要性がないことを意味するものでもあり、不測の経済ショックが起きない限り、2024年後半に大幅な利下げを行う必要はないかもしれません。このため、投資家たちはちょっとしたジレンマに陥っています。利回りは現在の高水準から若干は下がるでしょうが、株式需要を圧迫するのに十分魅力的な水準にとどまるかもしれません。このため、株式投資家は次の市場サイクルで望ましいリターンを得るには、よりリスクの高い賭けに出る必要があるかもしれません。一般に、株式ポートフォリオでより大きなリスクを取ると、大幅なドローダウンのリスクが高くなります。とはいっても、適切な株のリターンを追求しながらリスクを軽減する方法はあります。ポートフォリオ全体のリスクをうまく管理する方法として、今はオルタナティブ投資を検討する好機かもしれません。  

投資家たちは、オルタナティブ戦略を高度な戦略だとか、リスクが高いとかいう理由で無視したり、避けたりすることがあります。たしかに、これには一理あります。投資家は、ポートフォリオで用いる戦略をしっかりと理解しておくべきです。投資家は、リスクの観点からオルタナティブ投資戦略は通常、ポートフォリオのリスク面をコントロールするために採用されることを理解すべきでしょう。オルタナティブ投資の複雑さについていえば、オルタナティブ戦略を用いて投資することは、多くの場合、プロが運用する投資信託を通じて相関性のない資産クラスに投資するのと同じくらいシンプルです。  

以下に詳しく説明するオプション投資など、より洗練された戦略も存在します。知識豊富なブローカーなら、投資家が複雑な仕組みを理解するのを手助けしてくれるでしょう。オルタナティブ投資の経験を積むことで、投資家は新たに強力な投資ツールを手に入れることができるのです。 

ここでは、投資家がポートフォリオのリスクをコントロールしながら、より高いリターンを追求するのに役立つ3つの有力なオルタナティブ投資をご紹介します。  

 

1. ロングショート・ファンド  

ロングショート・ファンドは、特に高金利環境において、市場の変動を緩和することを意図した高度な戦略でありながらシンプルな投資方法です。これらのファンドは通常、上昇が予想される証券のロングポジションと下落が予想される証券のショートポジションを同時に保有することで、市場の方向性に関係なくリターンを生み出すことを目指しています。金利が上昇すると、従来の株式市場ではボラティリティが高まることがあります。そのため、ロングショート・ファンドは、リターンの高い株式のポジションを維持しつつ、下振れリスクを軽減しようとする投資家にとって魅力的な選択肢となります。ロングポジションとショートポジションの両方を取り入れることで、このファンドはリターンに対してよりバランスの取れたアプローチができるものであり、アルファを獲得しながらも、市場で起こりうる大幅なドローダウンに対してある程度の保護をもたらします。 

ロングショート・ファンドを探す際には、幅広いリサーチ能力を持つ経験豊富なポートフォリオ運用チームを探すことです。このファンドは、株式中心のポートフォリオを補完することはできますが、この戦略には追加的な管理コストやトレーディングコストがかかり、ロングのみの投資信託よりも管理手数料を増加させるため、ポートフォリオの中核的な保有ファンドとするには適していません。  

 

2. 貴金属投資信託  

金や銀などの貴金属は、長い間、経済の不確実性やインフレ圧力が高まっている時期には安全な資産とみなされてきました。インフレ懸念が長引く可能性のある高金利環境では、貴金属投資信託は、現物の地金を保有するという物流上の問題も起こらず、これらの商品への投資機会を投資家に提供します。このファンドは、金鉱株や先物契約を含む貴金属関連資産に分散投資されたポートフォリオに投資し、インフレのリスクや通貨安に対するヘッジとして利用できます。また、貴金属は歴史的に、株式や債券といった従来の資産クラスとの相関性が低いとされています。  

しかし、この資産クラスは、起こりうる市場の下落に対するヘッジ以上のものをもたらします。驚くべきことに、貴金属投資信託は、2000年から2021年1にかけて絶対的な富の創出という点で株式を上回っていました。 

 

3. カラー取引 

カラ-取引は、投資家がリスクの高い株式の期待される利益を追求すると同時に、オプションを使用することで下振れリスクを軽減する方法です。オプションは、指定された期間内 (満期まで) に原資産をあらかじめ決められた価格 (権利行使価格) で売買する権利を投資家に与える (義務ではありません) 金融商品です。オプションは、投資ポートフォリオのリスクを管理し、リターンを高めるためによく利用されます。たとえば、プットオプションを購入することで、投資家は起こりうる資産価値の損失から資産を守ることができ、コールオプションを購入することで、将来の上昇の動きから利益を得ることができます。  

カラー取引では、プロテクティブプットオプションの買いと、保有している株式ポジションのカバードコールオプションの売りを組み合わせます。プット買いは、原資産の価格がどこまで下落しても、その原資産をあらかじめ決定した価格で売却する権利を持てるため、起こりうる損失の下限を設定することができます。同時に、カバードコールの売りで、プロテクティブプット買いのコストを相殺する収益が生まれます。その結果、株式ポジションの周囲にカラー(枠)が形成され、上値と下値の両方の可能性が制限されます。カラー取引は、ポジションを保持するリスクを軽減しながら、より高いリターンが期待できる株式に投資しようとする投資家にとって特に有用な戦略です。  

この他にも、株式ポートフォリオのリスクを投資家の好みに合わせて調整できる一般的なオプション戦略がいくつかあります。オプションの仕組みに慣れてしまえば、投資家は創造的にそれらを取引に取り入れることができます。とはいっても、オプションは誰にでも使えるものではありません。信頼できるブローカーを利用し、オプション契約にかかるコストと金銭的義務を理解しておくことは、こうした代替手段を利用したい投資家にとって不可欠です。  

 

リスクとリターンのバランス 

オルタナティブ投資は、さまざまな市場環境において、投資家が受け入れられるリスクレベルに対して見込めるリターンを最適化するのに役立ちます。「オルタナティブ(代替)」という言葉が示すように、これらの戦略は通常、中核的な投資戦略として利用するべきではありません。むしろ、さまざまな市場環境や脅威から長期的な金融目標を守るために、戦術的にオルタナティブ投資を用いるのです。オルタナティブ投資では、各戦略には固有のリスクと考慮すべき事項が伴うことを認識し、慎重かつよく理解したうえで臨むことが極めて重要です。しかし、リスクを軽減できる可能性があるということは、オルタナティブ投資によってリターンを追求する可能性が広がるということでもあるため、投資家はこれらの投資を検討することをためらうべきではないでしょう。  

 

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